今日が最後の日みたいに生きる、毎日、デンマークで。

デンマークでの学生生活の日々の記録。

明日があると思ってはいけない。

1週間前、大好きな先生が突然学校を辞めた。
月曜日の朝の授業に新しい先生が来ていて、“⚪︎⚪︎先生はドクターストップがかかったので、もう来れなくなりました”という説明があった。
そんな悪い病気だったのに、学校に来てたの?
まさか死んじゃうの?
金曜日話したのに、何も言ってなかった。
もう先生の授業が受けられないなんて。。。
色んなことが頭に浮かんで、そして涙が出てきた。
隣に座っていた18歳の女の子がハグしてくれた。

突然すぎる。
ノートに目を落とすと、その先生に習った言葉がたくさん散らばっている。
どんどん涙がでてくる。
それだけその先生と先生の授業が好きだった。
またこの学校を選んだ理由の一つに、先生の授業を受けたかったから、というのがあるくらい。
一回トイレに行ったけど、涙も止まらないし、何も考えられないので自分の部屋戻った。
新しい先生には本当に申し訳ないことをしたと思う。

もう先生が学校に来ないなんて。。。
部屋でひとしきり泣いて、それから校長先生のところ行った。
新しい先生から説明を聞いたけど、そんなに悪い病気なんですか?と聞く。また泣く。
せっぱつまった模様の私に、『私は先生が病気だとは思わない』と校長。
そこで、デンマーク語の『先生』と『医者』(発音が似ている)を私が聞き間違えて早とちりしたと思った。恥ずかしすぎる!と思ったけど、違った。
デンマークで仕事を辞める時のことについて説明するからまあ掛けて。』みたいな落ち着いた様子で校長が説明してくれた。
その先生からは、金曜日に校長宛に“辞めます”という内容メールが来ていた。
デンマークでは、基本的に退職の一ヶ月前に申し出ることになっている。
ただ、残りの一ヶ月“病気です”と言って来ないという選択肢もある。
その先生は“病気です”と申し出てきた。
その先生は病気じゃないと校長は思う、だから安心して、という話。

むむー。
とりあえず病気ではないなら良かった。そしてかなり興味深いデンマークの退職事情。
話を聞いていると、クラスメイトの女の子が泣いた後の顔で入って来たので、校長が再度説明。
病気じゃないことを聞いて少し安心して、一緒に授業に戻った。

前期からここにいてその先生をよく知っている生徒達はかなりショックを受けた。
別の日本人の話によると、この学期から校長が変わり、前の校長とせっかく上手くやっていたその先生は、きっと今のやり方になにかしら思うところがあったんじゃないか、ということ。
校長の説明を聞いた時、校長とその先生の間に信頼関係はないなと感じた。
デンマークの働き方にも色々問題があるのかも知れないね』とその日本人が言っていたけど、当たっているのかも。

日本だったらこんな辞め方したら、無責任ってきっと言われる。
私だったら、『発つ鳥跡を濁さず』を徹底するように努める。
『退職の一ヶ月前に申し出る』というのが基本的だと思うけど、それでも日本では少なくとも2、3ヶ月前には言うのが“常識”。
全ての人に当てはまるとは思わないけど、デンマークではきっと仕事より自分を大切にしてるんだ、と感じた。
いい意味で日本の全体主義とは異なる。『辞めたら迷惑がかかる』とまず日本人は考える。
授業で失業手当の話も聞いたことがあったけど、別に嫌な仕事にしがみつかなくても、生きていけるように国が守ってくれるんだと思う。
不安が少ない=幸せ、につながっているのかな。

私は全くもってこの先生を責める気持ちはないし、無責任だなとも思わない。
その先生がまた色々デンマークについて教えてくれた。

ただ、寂しい。
その夜、先生に手紙を書いた。先生に習ったデンマーク語を総動員して。泣きながら。

先生の授業を受けていると、本当に毎時間、デンマーク語を習得する喜び、勉強する喜びを感じた。
プロフェッショナルだな、この先生に教えてもらえて幸運だな、と思った。
そして何より、彼女のパーソナリティーが好きだった。
6月、学校が終わる時に、先生も先生の授業も大好きだということを言えると思っていた。
それまであと5ヶ月、先生の授業を受けられると思っていた。色んな話が出来ると思っていた。
けど、今日突然それができないとわかった。
後悔だけ。
こんなに悲しいのは、やりのこした、と思うことがたくさんあるからだ。
先生がもう来ない、と聞いて一番先に思い浮かんだのは、金曜日放課後話したこと。
先生が、『おもしろい話があるの』と言って、私が旅行のお土産で渡した“I amsterdam”のライターに実はライトが付いていて、それが暗闇で役立ったという話をしてくれた。
『知りませんでした!』『私もしらなかったわー』と笑って、癒された。
それが最後だったならもっと色々話せばよかった!先生からあんな話をしてくれたのに。。。

誰かに突然会えなくなることなんて、いつだって起こり得るのに、忘れていた。
毎日最後の日だと思って生きようと決めていたのに、忘れていた。
それを思い出せてよかった。

先生は生きてるからまた会える。

手紙が届いたと先生からメッセージが届いた。
手紙のデンマーク語を褒めてくれた。